ストーマとの付き合い方
~自分らしく毎日を過ごすために~

卵巣がんの治療では、手術で摘出する範囲によって「ストーマ」と呼ばれる人工肛門や人工膀胱の造設が必要になることがあります。
「ストーマ」と聞くと不安を感じるかもしれませんが、ストーマを装着しながら楽しめるオシャレや食事、旅行やレジャーもあります。

そのためには、日常生活での注意点を理解し、自分なりの工夫を見つけ、ストーマの扱いやセルフケアに慣れることが重要です。

卵巣がん患者の暮らしのヒント、ストーマとの付き合い方

服装はゆとりのあるデザインを

ストーマの装着部分を締めつけたり、こすったりしないように、お腹周りに少し余裕のあるデザインであれば、自由にオシャレを楽しめます。ベルトがストーマに強く当たってしまうときは、サスペンダーを活用するのもひとつの方法です。

日常生活のワンポイント

ストーマ袋が皮膚に直接当たっていると、汗をかきやすくなり、かぶれなどの原因になります。吸水性のある布でできたカバーを袋にかぶせたり、ストーマと皮膚の間にタオルを入れたりするのもよいでしょう。

バランスと消化のよい食事を

高血圧や糖尿病などの持病があり、医師から食事制限を指導されていなければ、普段の食事を変える必要はありません。
ストーマの管理のためにも、栄養バランスを考えて、消化のよいものを選ぶことが大切です。

食品によっては、便の形状、便やガス(おなら)のにおいなどに影響するものもあります(表)。普段の食事や外食のメニュー選びの際に、以下の表が参考になります。

排泄物やガス(おなら)に影響を及ぼす食品

松浦信子、山田陽子著「快適!ストーマ生活―日常のお手入れから旅行まで 第2版」、医学書院、2019年 p70

入浴ではこんなことに気をつけて

ストーマ装具を正しく装着していれば、水に濡れてもはがれたり、お湯が入りこんだりすることはなく、入浴が可能です。

体が温まると、ストーマからの排泄量が急に増えることがあります。
入浴前にはたまった排泄物を捨てて、装具をきれいにふき取り、口がきちんと閉じているか確認しましょう。
また、肌と装具が密着している部分は湿気が取れにくいのでしっかりとふき取ることも大切です。

食後すぐの入浴は避けて

食後は腸の動きが活発になります。そのため、食後すぐの入浴は避け、しばらく時間をおいてから、あるいは食事の前や排泄の少ない時間帯を選んで入浴するとよいでしょう。

旅行やレジャーではもしものときに備えて

外出の際には、慣れない場所で装具を交換することもあります。
旅行やレジャーではもしものときに備えて、予備の交換セット(ストーマ装具やタオル、ウエットティッシュなど)を多めに準備すると安心です。また、交換セットは携帯し、着替えなども、余裕をもって備えておくことが大切です。

ストーマがあっても、体調が許す限り旅行やレジャーなどを、楽しむことができます。
それぞれの場面で工夫をしながら、余暇も趣味も楽しんで、自分らしく過ごしましょう。

卵巣がん患者の暮らしのヒント、ストーマ交換セットの例

もしものための準備

洗濯ばさみ、ウエットティッシュ、交換用のストーマ袋、タオル など
交換セットとしてジッパーバッグなどに入れてまとめておくと安心

よくある疑問

公衆浴場で気をつけることは?

温泉や銭湯、スパなどの公衆浴場も、ストーマを装着して入浴することができます。
万が一に備えて、お風呂場にも装具セットを持参し、トイレの場所を事前に確認しておくと安心です。

装具が気になる場合は、小さめの装具を利用したり、ストーマ袋を折りたたんで肌色のテープなどでしっかり固定し、浴室内の移動時はタオルで隠したりする方法もあります。なお、折りたたむ際は、小さく折りたたみすぎないように注意が必要です。

また、人目が気になる場合は、混雑する時間帯を避けたり、洗い場ではストーマが壁側になるように座ったり、などの工夫によって入浴を楽しむことができるでしょう。

スポーツは?プールに入れる?

手術後は、散歩やラジオ体操など軽い運動から始め、体力の回復をみながら徐々に運動量を上げていくことが大切です。体力が戻ったら、ストーマをつける前に行っていたスポーツも再開できる場合があります
しかし、腹筋トレーニングのような腹圧がかかる運動や、レスリングや柔道など、人とぶつかり合うスポーツはストーマのトラブルを起こしやすいため避けた方がよいといわれています。

また、プールに入ることもできます。ワンピースタイプやパレオ付きのデザイン、柄物の生地の水着にするとお腹周りが目立ちにくくなります。
セパレートタイプの水着だと、排泄処理を行いやすいという患者さんもいらっしゃいます。

なお、運動中は汗をかいて脱水状態にならないように、水分補給を忘れずに行うことが大切です。

移動時に気を付けることは?

車での移動時には、シートベルトがストーマを圧迫しないよう注意が必要です。心配な方はたたんだタオルをストーマの上に当てるなどの工夫で圧迫を回避することができます。

電車や飛行機では、トイレに近く、足を伸ばせる座席を確保しておくと安心です。
航空券の予約時には、身体障害者手帳の提示やストーマ保有者であることを説明すると優先的にトイレの近くや足が伸ばせる座席を選択できる場合もあります。

また、移動の際には、こまめにトイレに行くようにすると安心です。
オストメイトトイレを検索できるサイトやアプリもありますので、事前に確認してみましょう。

  • 参考文献
  • 1)公益社団法人日本オストミー協会
    https://www.joa-net.org/(最終閲覧:2024年2月20日)
  • 2)松浦信子、山田陽子著「快適!ストーマ生活―日常のお手入れから旅行まで 第2版」、医学書院、2019年