一人ひとりの治療計画

卵巣がんといっても、タイプは一人ひとり異なります。

医師は、卵巣がんの分類や組織型、進行期のほか、家族歴なども考慮して最良と考えられる治療を提案します。 治療の内容はどのようなものか、治療によって期待されることはどのようなものか、など分からないことがあれば納得できるまで何でも質問し、説明してもらいましょう。 卵巣がんの治療法として、手術療法、薬物療法[抗がん剤治療(化学療法)、分子標的治療]、放射線治療などがあります。

進行期別の治療方針
(初回治療)**

卵巣がんの治療では、いずれの進行期でも最初に手術を行って、がんをできるだけ取り除きます。さらに、腹水や腹腔内の組織を採取して、がんの広がり具合を確認し、進行期(I~IV期)の決定も行います。その後、行われる薬物療法には、抗がん剤治療(化学療法)と分子標的治療の2種類があります。手術をした後に抗がん剤を追加するのが基本ですが、特にIII〜IV期の患者さんでは、抗がん剤と分子標的薬を併用したり、抗がん剤治療後にがんの再発リスクを減らす「維持療法」として分子標的薬が用いられたりします。*図1

【図1 進行期別の治療方針】

進行期別の治療方針

初回治療:手術

がんをできるだけ取り除く。進行期(1から4期)を決定する。

試験開腹、または原発巣が摘出困難な場合

初回治療…薬物療法 から 手術

進行期の決定(病理学的組織診断による)

進行度1期の場合。術後治療は、経過観察、または、薬物療法。

進行度2〜4期の場合。術後治療は、薬物療法、そののち、経過観察。

* * をもとに作図

手術

がんを取り除くために行う治療で、抗がん剤治療の前に行うのが基本です。しかし、がんを完全に摘出できないと予想される場合は、先に抗がん剤治療を行ってがんを小さくしてから手術を行うことがあります。残存腫瘍が少なければ少ないほど予後がよいため、できるだけ多くのがんを摘出する手術(腫瘍減量術)を実施します。*

抗がん剤治療(化学療法)

卵巣がんは他のがんと比べて抗がん剤がよく効くがんで、手術をした後に抗がん剤治療を追加するのが基本です。卵巣がんの進行期や組織型などに応じて様々な抗がん剤治療が行われます。

抗がん剤治療の選択肢

卵巣がんの抗がん剤治療は多くの場合、2つの薬を併用して進められます。作用の仕方が異なる薬を一緒に使うことによって、効果を強めることができます。点滴や注射で静脈内に投与します(静脈内化学療法)。抗がん剤治療では最も一般的な投与方法です。

プラチナ製剤
がん細胞内でDNAが作られないようにしてがん細胞を死滅させると考えられています。
タキサン系製剤
がん細胞が分裂できないように作用します。

分子標的治療

分子標的薬は、がん細胞の中にある特定の物質(分子)の働きを妨害することによって、がん細胞の増殖や転移を抑える薬です。抗がん剤と一緒に使ったり、抗がん剤治療が終わった後にがんの再発リスクを減らす「維持療法」として使ったりします。

分子標的薬の選択肢

現在、日本で卵巣がんに使える分子標的薬には、「血管新生阻害剤」や「PARP阻害剤」があります。

血管新生阻害剤
がんに栄養や酸素を運ぶ血管の形成に必要な物質(血管内皮細胞増殖因子: VEGF)に作用して、がんの成長や増殖を抑える薬です。薬は点滴で静脈内に投与します。
PARP阻害剤
DNAの傷を修復するために必要な 「PARP」という物質の働きを阻害して、がん細胞の増殖を抑える薬です。飲み薬です。
  1. 日本婦人科腫瘍学会(編):卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療 ガイドライン 2020 年版, 金原出版, p19, 2020
  2. 日本婦人科腫瘍学会(編): 患者さんとご家族のための 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第 2 版, 金原出版, p156-157, 2016
  3. *日本婦人科腫瘍学会(編):卵巣がん治療ガイドライン 2020年版, 金原出版, p69, 2020